キーフリーシステムは、現代の自動車において非常に普及しており、その利便性は言うまでもありません。しかし、故障が発生した際には、様々な誤解や憶測が飛び交うことも少なくありません。今回は、自動車整備士の立場から、キーフリー故障に関してよくある誤解と、知っておくべき真実について解説したいと思います。まず、キーフリーが故障した際によく耳にするのが、「車のバッテリーが上がったからキーフリーも使えないんだ」というものです。確かに、バッテリー上がりはキーフリーが作動しない原因の一つではありますが、それが全てではありません。バッテリーが完全に上がってしまえば、そもそも車のエンジンすら始動しません。キーフリーだけが反応しない場合、バッテリーの電圧が低下している可能性はありますが、他の原因も考えられます。例えば、キー側の電池切れや、キーと車両間の通信不良などが挙げられます。バッテリーが原因かどうかを判断するには、他の電装品(ヘッドライトやルームランプなど)の点灯状況を確認することが一つの目安となります。もしこれらの電装品も暗かったり、点灯しなかったりする場合は、バッテリーの可能性が高いと言えるでしょう。次に多い誤解として、「キーフリーは電波を使っているから、電波の悪い場所では使えないんだ」というものです。確かに、キーフリーシステムは微弱な電波を利用して通信を行っていますが、一般的な携帯電話の電波のように、特定の場所で極端に繋がりが悪くなるということは稀です。むしろ、高圧電線の下や強い電磁波を発生する設備の近くなど、特殊な環境下でのみ影響を受ける可能性があります。もし特定の場所でのみキーフリーが反応しない場合は、電波干渉の可能性を疑ってみても良いかもしれませんが、ほとんどの場合はキー本体または車両側の問題であると考えられます。また、「キーフリーは複雑なシステムだから、ちょっとした故障でも修理に高額な費用がかかる」というイメージを持っている方もいるかもしれません。ご自身の車のメカニカルキーの場所や使い方を、取扱説明書で事前に確認しておくことを強くお勧めします。キーフリーシステムは非常に便利な機能ですが、その仕組みや故障の原因について正しい知識を持つことで、いざという時にも冷静に対処することができます。
自動車整備士が語る、キーフリー故障でよくある誤解と真実