「鍵を持っていないのに、なぜ、ドアが閉まっただけで、ロックされてしまうのか」。オートロックによる締め出しを経験した人の多くが、その理不尽とも思える現象に、疑問を抱くかもしれません。その答えは、オートロックが機能するための、基本的な「仕組み」と、そこに潜む、いくつかの「盲点」を理解することで、明らかになります。オートロックには、主に二つのタイプが存在します。一つは、昔ながらの、ホテルなどでよく見られる、ドアを閉めると、ラッチボルト(三角形の出っ張り)が、自動的に施錠状態になる、機械式のものです。もう一つが、近年のマンションで主流となっている、ドアに設置された「マグネットセンサー」と、錠前の「電気的な制御」を組み合わせたものです。後者の仕組みは、こうです。ドアと、ドア枠には、それぞれ、対になるマグネットセンサーが、取り付けられています。ドアが閉まり、この二つのセンサーが、ぴったりとくっつくと、「ドアが閉まった」という信号が、錠前に送られます。そして、その信号を受けて、錠前内部のモーターが作動し、自動的に、デッドボルト(かんぬき)を繰り出して、施錠を完了させるのです。この、センサーとモーターの連動こそが、オートロックの心臓部です。では、なぜ、締め出しが起こるのでしょうか。その最大の理由は、このシステムが、「ドアの内側に、人がいるか、いないか」や、「鍵が、部屋の中にあるか、外にあるか」を、一切、判断していない、という点にあります。システムが認識しているのは、「ドアが開いているか、閉まっているか」という、ただ一つの、物理的な事実だけなのです。そのため、あなたが、たとえ、ほんの数秒間、鍵を持たずに、ドアの外に出たとしても、その間に、風や、ドアクローザーの力で、ドアが完全に閉まってしまえば、センサーは、それを「正常な閉扉」と判断し、容赦なく、施錠の命令を下してしまうのです。オートロックは、私たちの安全を守るための、非常に優秀な番人です。しかし、その番人は、時に、融通が利かず、そして、少しだけ、おっちょこちょいな一面も、持っているのです。