それは、私が、今のオートロック付きのマンションに、引っ越してきて、まだ一ヶ月も経たない頃の、ある日曜の朝のことでした。前の晩に、飲み過ぎてしまった私は、少し気だるい頭で、目を覚ましました。そして、溜まってしまったゴミ袋を、二つ、両手に抱え、寝ぼけ眼のまま、玄関のドアを開けたのです。もちろん、私の手には、ゴミ袋しかありません。鍵も、スマートフォンも、全て、リビングのテーブルの上に、置かれたままでした。そして、ゴミを、集積所に捨て、さて、部屋に戻ろうかと、玄関のドアノブに手をかけた、その瞬間。私の背後で、「ガチャン」という、無情な、そして、聞き慣れない音がしました。オートロックの施錠音です。その瞬間、私の脳は、完全に覚醒し、同時に、凍りつきました。寝起きの、よれよれのTシャツと、スウェットパンツ姿。手には、空っぽの財布と、鍵のかかっていないスマートフォン。まさに、完璧な「締め出し」の完成でした。管理会社は、もちろん、日曜日で休みです。近所に、頼れる友人もいません。途方に暮れた私は、マンションのエントランスの隅で、体育座りをしながら、ただただ、自分の愚かさを、呪い続けました。一時間ほど経った頃でしょうか。同じマンションの住人の方が、出かけていくところに、遭遇しました。私は、事情を話し、その方に、スマートフォンで、鍵屋を呼んでもらうことができました。駆けつけてくれた鍵屋さんは、手慣れた様子で、わずか十分ほどで、私の部屋の扉を開けてくれました。その費用、二万五千円。私の、その月の小遣いの、大半が、一瞬にして、消え去った瞬間でした。あの日以来、私は、玄関のドアノブに、「鍵、スマホ、持った?」という、自作の、情けないテプラを、貼っています。そして、家を出る前には、必ず、それを指差し確認するのです。
私がオートロックに締め出された日